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和賀 巌

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「孤独」に負けない社会を創るために

和賀 巌(わが いわお)

COI東北拠点 拠点長

プロジェクト統括(PL)

NECソリューションイノベータ(株)

プロフェッショナルフェロー

2030年、日本は一人暮らし大国に

2030年、日本は一人暮らし大国に

これは私の義理の母に起こった出来事なのですが、ある朝、彼女は胸に強い痛みを感じて目を覚ましました。
心筋梗塞です。
しかし一人暮らしをしていましたから、誰に助けてもらうこともできない。
痛みに耐えながら自分で救急車を呼び、マンションのエレベーターに救急用のタンカが入れないからと、這いつくばりながら自力でエレベーターに乗り、やっと病院まで行くことができたのです。
幸い、カテーテル手術当番医が病院におり、一命を取り留めることができました。
この時、私自身はもちろんですし、義理の母も一人暮らし故の恐怖や大変さを心底感じたはずです。
そんな中、2030年には男性243万人、女性487万人の65歳以上の方々が、一人で暮らす社会がやってくると言われています。
こうした孤立して生きる人々の健康問題は、これからさらに深刻さを増していくでしょう。

2030年、日本は一人暮らし大国に

孤独が引き起こす健康被害

米国心理学会で報告された大規模研究解析結果から、「孤独」は肥満や喫煙よりも深刻な健康リスクファクターであることが明確になりました。
普段から孤独を感じている人は、そうでない人に比べて64%も多く認知症を発症し、心疾患や脳梗塞、高血圧を起こしやすく、死亡率も26%上昇してしまう。
それは、15本のたばこや肥満と同等の健康被害です。
こういった孤独に対しての研究や調査が進んでいる英国では、孤独の健康と社会損失は320億ポンド(約4.9兆円)にのぼるとし、孤独担当大臣を新たに設立。
トレーシー・クローチさんを初代孤独担当大臣として選出し、イノベーションを活用した孤独対策への取り組みが開始されました。
しかしその一方で、一人暮らしが急増する日本では、孤独死に対する明確な定義もいまだ定められておらず、統計データも存在せず、さらには社会損失の推計データも発表されていないのです。

バックキャスティング

COI東北拠点は、いつでも、どこにいても、自分や家族の生活や健康状態がわかり、また、家族を超えて多世代間で応援支援が得られる、さりげないセンシングによる「日常人間ドック」の開発とビジネスモデルの社会実装に向けて活動しています。
2017年にバックキャスティングの再試行を実施し、少子高齢化が進む先進諸国において、独居世帯が主流を占める社会構造の中で、どのように健康管理を進め、家族や周りの人たちとの関係を構築し幸せに暮らすかについて、議論を深めました。
その結果、「自助」・「共助」、「個人最適」・「社会最適」のそれぞれの軸から、「温かみ」のある未来シナリオを創生しました。
具体的には、次のような「自助と共助の社会」です。

 

  • 自分で健康状態を予測・管理でき、将来の不安を感じること無く暮らす
  • 頭・心・体の能力が低下しても、社会に参画でき生涯現役で暮らす
  • 家族を超えて、多世代が「つながり」「交流し」「支援し合って」暮らせる

個々人は自立しつつも、他者との絆を感じ、100歳まで楽しく・元気に、社会と関わり続けられる未来を描くためには、以上の事が必要不可欠なのです。

はかる-わかる-おくる

はかる-わかる-おくる

自助と共助の社会」を実現するために、COI東北拠点の研究プロジェクトを、「はかる」(測る、計る、量る)、「わかる」(解る、分かる、判る)、「おくる」(送る[自助]、贈る[共助])の3つの要素に再定義し、「暮らしの再発明」、特に「共助の再発明」を、目標として新たに設定しました。
また、これまで進めてきた数多くのセンサ・デバイス群の開発は、この目標に基づいて優先付けをし、短期的な選択と集中を強化することで、社会実装へのシナリオに則って、地域における実証フィールドに乗せていく計画が進行しています。

はかる-わかる-おくる

企業間連携(B-U-B:Business-University-Business)とイノベーションプラットフォーム

これらの活動を通じて、これまでにない新たな試みが次々と実を結びつつあり、持続的なイノベーションプラットフォームに向けた新しい進化への道に大きく舵を切り始めました。
多様なサービスを展開する多くの異業種企業の参画と、大学をハブにした企業間連携(B-U-B)によって、新規サービスの創造も加速しています。
さらに、研究開発を効果的・効率的に進めるだけではなく、将来の社会ビジョンの実現や事業化に必要なマーケティング戦略の立案、特許や市場動向・技術動向の調査のほか、イノベーションをアクセラレートする活動が、リサーチ・アドミニストレーター(URA)を中心に強化されています。
これら各種活動のシナジー効果により、COI東北拠点は持続的なイノベーション創出のエコシステムの構築に邁進していきます。

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