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Interview 02
ヘルスケアのプラットフォームとなる「思いやりAI(愛)」
研究
リーダー
サブPL
NECソリューションイノベータ(株)
Research
COI東北拠点にて研究を行っている各研究者より研究内容をご紹介します。
日本の未来を考えた時に、独居者の増加や家族のあり方の変化といった課題は避けられないでしょう。そのような社会では、家族を超えて多世代がつながり、交流し、支援し合って暮らす「共助」の心が大切になります。現在、COI東北ではヘルスケアに関わる様々なセンサを研究開発していますが、それらのデータやメリットを統合して回していくプラットフォームのコンセプトを考えている時に「思いやり」というキーワードが出てきました。共助の心に通じる言葉でもありますし、和賀拠点長の信念である「あたたかさ」「皆が健康であってほしいという願い」にもマッチした言葉でもあります。
そこで、プラットフォームを具現化するための「AI(愛)」を組み合わせて、「思いやりAI(愛)」という名前を付けました。おもてなしと同じく、思いやりは日本ならではの概念でしょう。思いやりAIが、日本ならではのプラットフォームとなって世界に羽ばたいてほしいと願っています。
COI東北のミッションは「人が変わる。社会が変わる。」です。思いやりAIは、人々の健康に関する行動変容を促すことができるものとなるでしょう。現在開発されている数々のセンサはできることがそれぞれ異なりますが、各センサの様々な特徴やメリットを、思いやりAIというプラットフォームを通じて組み合わせることで、新しい何かが生まれるのではないかと信じて開発に励んでいます。
具体的には、センサで集約したヘルスケアにまつわるデータを思いやりAIに集約することで、健康のための提案を行えるようになります。今はまだ実現できていませんが、ロボットやAIスピーカーがデータを参照した上で、健康診断やスポーツジムに行くタイミング、食べるべきものなどを自ら提案してくれるようになることを目標としています。
ロボットやAIスピーカーが話しかけてくれることは、独居者の孤独感の解消にもなるのではないでしょうか。話しかけられることで人々のヘルスケアに関する行動が変わり、皆が健康に過ごせる社会の創出を目指しています。
Research
実現の鍵となる研究開発テーマをご紹介します。
思いやりAIを開発したきっかけは、COI東北で開発が進んでいた数々のセンサや収集されたデータを組み合わせて付加価値を生み出し、ビジネスとして軌道に乗せたいと思ったからでした。今はどの業界でも、様々なWebシステムを連携させたビジネスモデルが生まれており、このモデルはヘルスケア分野でも応用できるのではないかと考えました。
思いやりAIには、年齢や性別といった属性ごとの健康に関する数値が集約され、それがビッグデータとなります。例えば、50代男性の一般的な血圧と睡眠時間というデータを保険会社が買い取ることで、数値に基づいた説得力のある保険商品を開発するということもできるでしょう。思いやりAIのデータは直接的に健康に活かされるだけでなく、マーケティング的にも用途を広げられるのです。
センサで得られた情報や研究されているゲノムの情報以外にも、自治体のオープンデータやこれから生まれてくる知見を集め、つなぎあわせるプラットフォームになることで、新しい価値を人々に提供できるようになるはずです。現在は、様々な企業と意見交換会を開くなど、思いやりAIをヘルスケアのプラットフォームとして活用していくためのアイディアを集めています。
思いやりAIのビッグデータは何にでも活用できると考えています。健康に関する提案や保険商材の開発、ヘルスケア分野の電化製品の開発など、企業が強みとする分野とデータを掛け合わせることであらゆる可能性が広がるでしょう。AIには、強いAIと弱いAIという2種類が存在します。現状のロボットやAIスピーカーは、特定のことに関する答えを導くに留まる弱いAIですが、十数年後には人間の代わりにコンピューターが様々な提案をしてくれる強いAIができるだろうと考えています。ロボットやAIスピーカーが人に寄り添って健康をサポートしてくれるようになれば、人々のヘルスケアに対する意識はさらに向上していくでしょう。離れて暮らす親子であれば、親の健康状態をデータで計測し、声をかけるべきタイミングをAIスピーカーが子どもに提案。そして、子どもが実際に電話をかけたり親を訪問したりしてコミュニケーションをとる、といった使い方もできると思います。思いやりAIを通じて、人々がお互いを思いやり共助し合える社会を実現したいと願っています。
出身地の仙台からイノベーションを巻き起こしていきたいです。日本で、この地域発で、人々の健康に対する意識や行動を変化させるサービスをお届けすることを目指しています。COI東北が研究を進めるヘルスケアと私の専門分野のITを組み合わせ、ビジネス面でもプロジェクトを成長させていきたいと思います。
Outlook
思いやりAIにはまだ十分なボリュームのデータが集まり切っていないため、実証できる場を用意したり、先生や被験者に集まってもらったりという取り組みが必要だと感じています。順調にいけば2年ほどである程度のデータが集まると見込んでおり、そのために様々な働きかけをしています。
COI東北のプロジェクトはどれも素晴らしく、社会や人々の行動を変えるものばかりです。その仕組みを社会に浸透させ、プロジェクトをさらに発展させるためには、ビジネスとして成功させることも必要不可欠です。私は企業人ですので、思いやりAIの開発だけでなく、ビジネスという観点からもプロジェクトに貢献していきたいと思います。