超高齢化社会に対応するスマートエイジング ※素材・食品の開発
● 東北大学名誉教授 木村修一
農学研究科発の技術シーズを実用化することで超高齢化社会に対応するスマートエイジング、食の安全・安心、少子化など日本社会の重要な課題の解決に貢献する。
木村修一は東北大学農学部で昭和37年から31年間研究・教育を行い定年退官後、平成5年から19年間昭和女子大の大学院教授として研究・教育に携わりました。これらの研究成果を実用化したい強い思いがあり、平成27年からレジリエント社会構築イノベーションセンターにて研究を続けております。
現在、老化を進める元凶として考えられているものは、活性酸素及び糖化(グリゲーション)による組織・細胞の変性です。木村は世界中の様々な植物成分から抗酸化性のある物質を探索し、最も抗酸化力の強い物として「シベリアカラマツの樹木成分」すなわちタキシフオリン(dihydro-quercetin)を選定しました。これは古くからシベリアの住民の民間療法の薬として使われてきた歴史を持つ物質です。
タキシフオリンのきわめて強い抗酸化作用を生かした研究を行い、その成果の一つとしてポテトチップスなど高温加熱食品に多く含まれるアクリルアミド含量を低減することを見出しました。アクリルアミドは発ガン性が強く心配されている物質で、FAO/WHOから世界の食品企業と研究者に対し、速やかにこの対策を行うようにと勧告が出ています。木村は日本だけではなくロシア、中国、EU(ドイツ、イタリア、イギリス)で特許を取得しております。
さらにこの物質が抗糖化作用のあることを確認し、動物実験で糖尿病性白内障を防止できることを明らかにしました。また、この物質が脳機能に対する抗酸化・抗グリゲーション作用があること、認知症予防の可能性があることについても興味ある成果を得ており、これについても研究を進めております。
併せて、東北大農学研究科発の技術シーズを実用化し、社会に役立てることを目的として、農学研究科の教職員、農学部OBが出資し平成30年8月に設立した(株)東北アグリサイエンスイノベーション等とも連携しながら、農学研究科発の技術シーズ「老人性便秘改善薬の開発と予防食品の開発」、「腸内環境を改善するサプリメント開発」、「男性更年期障害を予防する食品の開発」、「不妊を予防する食品の開発」 等について農学研究科と実用化研究を推進いたします。
※スマートエイジング : 東北大学が2006年から提唱している少子化・超高齢社会における新しい概念で、「エイジング(加齢)による経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」。
Copyright ©2015 Tohoku University Innovation Center for Creation of a Resilient Society.